映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間

世界のビジュアルスタジオ

映像は、監督一人ではなく「会社」が作っています。学生の皆さんが卒業して入っていくのも、こうした会社です。世界の第一線で仕事をしているスタジオを知っておくことは、作品を観る目を育てるだけでなく、自分の進路を考える地図にもなります。

スタジオの種類

種類主な仕事例
VFXスタジオ実写の映画やCMに、CGや合成で「ないもの」を足すILM、Weta FX、Framestore、The Mill、KASSEN、白組
デザイン・モーションスタジオCM、ブランド映像、番組やイベントのビジュアルを設計するWOW、LIKI、Psyop、Brand New School
タイトルデザインスタジオ映画やドラマのオープニングとエンディングを作るImaginary Forces、Prologue、Elastic
ブロードキャストデザインスタジオテレビ局や番組のロゴ、ID、オープニングをまとめて設計するN³ DESIGN
アニメーション・ゲーム作品そのものを企画から作るピクサー、Production I.G、ノーティードッグ

一つの会社が複数の種類にまたがることも多くあります。

日本のスタジオ

WOW(ワウ)

ビジュアルデザインスタジオ

1997年4月 仙台で設立/2000年に本社を東京へ/東京・仙台・ロンドン/約60名

代表的な仕事 CM、ブランドのコンセプト映像、商業施設や都市空間のインスタレーション、メーカーと共同開発するUI、オリジナルのアート作品

仙台で生まれ、映像だけでなく空間やUIまでデザインの範囲を広げてきたスタジオです。2006年ごろからインスタレーションやUIの仕事が増え、研究開発の部署を持って、試した表現を商業の仕事に活かす作り方をしています。僕も2003年から2005年まで在籍していました。「映像の会社」ではなく「ビジュアルをデザインする会社」という考え方は、ここで学んだものです。

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KASSEN(カッセン)

VFXスタジオ

2020年12月設立/東京/約50名

代表的な仕事 サントリー「GEKIAWA THE STRONG」、BUMP OF CHICKEN「なないろ」MV、ポケモン関連のCMやトレーラー、配信ドラマのVFX

設立から数年で、CM、MV、配信ドラマまで手がけるようになった新しいVFXスタジオです。CG、コンポジット、編集、カラーグレーディング、撮影までを一つの会社の中に持ち、部署をまたいだ作り方を武器にしています。社名は「合戦」から来ていて、たくさんの人が一つの目的に向かって戦う様子を表しています。若い会社でも、仕組みの作り方しだいで一線に立てるという例です。

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LIKI

映像制作・デザイン

東京(品川区大崎)/少人数のデザインチーム

代表的な仕事 CM、ミュージックビデオ、ライブ・イベント映像、Webムービー、モーションロゴ。WOWが手がけた東京ドームの読売ジャイアンツの映像にも、デザイナーとして参加

モーショングラフィックスとCGを中心に、「時間に沿ったデザイン」として映像を作るスタジオです。人数は多くありませんが、デザインの精度で大きな企業のCMやスタジアムの演出まで手がけています。地味に見える道路舗装の会社のCMを、ポップなモーショングラフィックスに仕上げた仕事は、題材の印象をデザインで変えるよい例です。取材では「一人で黙々と作るより、いろんな人に見てもらい、意見を次の作品に生かすことが大事だ」という趣旨のことを話しています。この授業で言う「石を投げて波紋を見る」を、会社の作り方にしているスタジオです。

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白組(しろぐみ)

VFX・CGプロダクション

1974年設立/東京(調布ほか)

代表的な仕事 『ALWAYS 三丁目の夕日』、『STAND BY ME ドラえもん』、『ゴジラ-1.0』(アカデミー視覚効果賞)

50年以上続く日本のVFXとCGの老舗です。山崎貴監督が所属し、『ゴジラ-1.0』では調布スタジオの35人で610カットを作り、日本映画として初めてアカデミー視覚効果賞を受賞しました。第9〜10回で扱った作品の現場です。少人数でも、判断と技術で世界の一線に届くことを示した会社です。

リール・作品動画

Wikipedia「白組」第9回『ゴジラ-1.0』

海外のスタジオ

The Mill(ザ・ミル)

VFXスタジオ(広告中心)

1990年 ロンドンで設立/2015年にTechnicolorの傘下へ/2025年2月に閉鎖、同年に新しい親会社のもとで再始動

代表的な仕事 映画『グラディエーター』(アカデミー視覚効果賞)、ナイキなどの大型CM、『ドクター・フー』(2005年版)のタイトル

ロンドンのソーホーで生まれ、広告のVFXで世界の頂点に立ったスタジオです。ところが2025年2月、親会社のTechnicolorが経営破綻し、The Millも突然閉鎖されました。同じ年に別の会社が買い取り、ロンドンで小さく再始動しています。どれだけ有名な会社でも、お金の流れの中で一瞬で消えることがある。「はじめに読む」の記事で話したお金の構造を、一番生々しく示した出来事です。

リール・作品動画

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The Mill Showreel 2017年ごろに公開されたショーリールです。

Vimeoで作品を見るはじめに読む(お金の流れ)

Brand New School(ブランニュースクール)

デザイン・プロダクションスタジオ

2000年 ジョナサン・ノタロがロサンゼルスで設立/のちにニューヨークにも拠点

代表的な仕事 CM、ブランディング、インタラクティブ、ミュージックビデオ。D&ADやカンヌライオンズなどで受賞

アートディレクターだったジョナサン・ノタロが独立して作ったスタジオです。デザインと実写、アニメーションを混ぜた表現で、モーショングラフィックスが広告の中心になっていった2000年代を引っ張りました。リサーチ、実験、失敗、発見を大事にする作り方を掲げています。

リール・作品動画

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Cartoon Network 2010 On-Air Brand Expansion カートゥーン ネットワークのチャンネルデザインをまとめた映像です。

公式サイトVimeoで作品を見る

Psyop(サイオップ)

アニメーション・デザインスタジオ

2000年 ニューヨークで設立/ニューヨーク・ロサンゼルス

代表的な仕事 コカ・コーラ「Happiness Factory」(2006年、カンヌライオンズ受賞)、MTVの番組デザイン

MTVで働いていたデザイナーたちを中心に、5人で立ち上げたスタジオです。創業者のうちマリー・ヒョンとカイリー・マトゥリックの2人は女性で、どちらもディレクターとして作品を率いてきました。自動販売機の中に工場の世界があるという「Happiness Factory」は、広告とエンターテインメントの境界をなくした仕事として今も語られます。制作と仕上げを別々の会社でやるのが当たり前だった時代に、それを一つのスタジオでやる形を作りました。

リール・作品動画

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ING DIRECT「Vole」 Psyopが制作会社Smugglerと組んだCMです。

公式サイトVimeoで作品を見る

N³ DESIGN(N3デザイン)

ブロードキャストデザイン・CG

ロシア・モスクワ/CG、アートディレクション、VFX、ブロードキャストデザイン

代表的な仕事 パナソニック「VIERA」の映像、「Miss Russia」の番組グラフィックス、モスクワ地下鉄の建設を追った記録映像のグラフィックス、短編『Buran』(展示施設VDNH向け)、HoloLensを使った実験

モスクワを拠点にした、CGとブロードキャストデザインのスタジオです。ブロードキャストデザインとは、テレビ局や番組の「顔」になる映像を設計する仕事で、局のロゴが動くID、番組のオープニング、番組と番組のつなぎの映像などをまとめて作ります。N³はそこから、商品のCG、記録映像のグラフィックス、展示施設の短編、新しいデバイスの実験へと仕事の幅を広げてきました。重厚な光と精度の高いCGは、ロシアのモーションデザインが世界から注目された理由そのものです。第47回のタイトルデザインが「作品の入口」なら、ブロードキャストデザインは「局や番組の入口」を作る仕事です。作品はVimeoにまとまっています。

リール・作品動画

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Miss Russia 「Made in N3」として公開されている番組グラフィックスです。

Vimeo「Miss Russia」Vimeo「Moscow Metrostroy」Vimeo「HoloLensの実験」Vimeoで他の作品を探す第47回 オープニング集

授業で出てきた会社

各回の作品を作った会社の一覧です。作品を観たら、作った会社のショーリールも探してみてください。

会社種類授業で出てきた仕事
ILMVFXスタジオ『スター・ウォーズ』のために作られた会社。第49回『ジュラシック・パーク』
Weta Digital(現Weta FX)VFXスタジオ第40〜41回『アバター』
FramestoreVFXスタジオ第19回『ゼロ・グラビティ』
ピクサーCGアニメーションスタジオ第13〜14回『マイ・エレメント』、第50回『トイ・ストーリー』
R/GA、Imaginary Forces、Prologueタイトルデザイン第47回 オープニング集(カイル・クーパー)
yU+co、Elastic、Blur Studioタイトルデザイン・CG第47回(『300』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ドラゴン・タトゥーの女』)
白組VFX・CG第9〜10回『ゴジラ-1.0』
Production I.Gアニメ制作第52回『攻殻機動隊』
スタジオジブリアニメ制作第31〜32回『千と千尋の神隠し』
コミックス・ウェーブ・フィルムアニメ制作第25〜26回『君の名は。』
ノーティードッグゲーム開発第29回『The Last of Us』

スタジオを見るときのポイント

  • ショーリールを見る どのスタジオも、代表作をまとめた短い映像を公開しています。VimeoやYouTube、公式サイトで探してください。
  • クレジットを見る 好きな作品のエンディングで、制作会社の名前を探す習慣をつけてください。Art of the Titleには、タイトルのクレジットが詳しく載っています。
  • お金の流れの中での位置を見る その会社は権利を持つ側か、作業を請け負う側か。広告が中心か、映画やゲームが中心か。はじめに読むの記事の表と照らし合わせてください。
  • 会社は変わる The Millのように、有名な会社でも閉鎖や再編があります。会社の名前より、そこで何を身につけられるかで選んでください。

会社の情報は公開情報をもとにしています(2026年11月時点)。設立年や拠点は変わることがあるため、各社の公式サイトで確認してください。