35人で作ったゴジラは、音でどう大きくなったか 『ゴジラ-1.0』
第9回と第10回は「音と音楽」です。題材は、2023年公開の『ゴジラ-1.0』です。CGを学ぶ学生にとっては、少人数のチームでアカデミー視覚効果賞を獲った作品として、映像面でも重要な一本です。前編では効果音や静寂などの「音」、後編では「音楽」を扱います。
作品データ
| 『ゴジラ-1.0』 | |
|---|---|
| 公開 | 2023年11月3日(日本) |
| 上映時間 | 125分 |
| 監督・脚本・VFX | 山崎貴 |
| VFXディレクター | 渋谷紀世子 |
| 撮影 | 柴崎幸三 |
| 編集 | 宮島竜治 |
| 音楽 | 佐藤直紀 |
| VFX制作 | 白組 調布スタジオ。35人で610カット、約8か月 |
| 使用ソフト | Maya(アニメーション)、Houdini(水のシミュレーション)、Nuke(コンポジット) |
| 評価 | 第96回アカデミー賞 視覚効果賞(日本映画として初のノミネートと受賞) |
| 配信 | Netflix:見放題(2026年4月から。モノクロ版『ゴジラ-1.0/C』も同時配信と告知)/Prime Video:見放題とレンタルで情報が分かれるため要確認/Disney+:配信なし 2026年10月時点の調査記事、Netflix Japan公式Xより |
出典:Wikipedia英語版「Godzilla Minus One」「List of accolades received by Godzilla Minus One」、VFX関連の報道、配信状況の調査記事をもとに要約しています。
作り手のバックボーン
山崎貴(監督・脚本・VFX) VFXの現場から監督になった人物で、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどで知られます。本作では監督とVFXスーパーバイザーを兼ね、アカデミー視覚効果賞を受賞しました。監督がこの賞を獲ったのは、『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック以来とされています。
白組 山崎が所属するVFX・CGの制作会社です。調布スタジオの35人が、ひとつの大部屋で作業したと報じられています。ハリウッドの大作と比べると、ごく小さなチームです。
音を分解する
| 音の種類 | 意味 | 授業で探した例 |
|---|---|---|
| 効果音 | 画面の中で鳴っている音 | 足音、建物の崩れる音、水の音 |
| 環境音 | 場所の空気を伝える音 | 海、風、街のざわめき |
| 台詞 | 登場人物の声 | 叫び、指示、ささやき |
| 静寂 | 音を止めること | 大きな出来事の直前の「間」 |
| 音楽 | 画面の外から鳴る音 | 第10回で扱う |
あわせて知りたい作り手
渋谷紀世子VFXディレクター
『ゴジラ-1.0』のVFXディレクターで、山崎貴監督らとともにアカデミー視覚効果賞を受賞したチームの一人です。35人のチームで610カットを仕上げた現場の中心にいました。
考察:比較から何が言えるか
1. 巨大さは、画と音の掛け算で生まれる
画面に映るゴジラの大きさは、カメラとの距離や周囲の建物との比較で伝わります。しかし「重さ」や「近さ」は、足音や地面の振動、水の音で補われています。音を消して同じ場面を観ると、迫力が大きく落ちることを授業で確認しました。
2. 音を止めると、観客は身構える
大きな出来事の直前に音が引くと、観客は次に何かが来ると感じて身構えます。静寂は「何もない時間」ではなく、テンションカーブを作るための演出です。
3. 少人数のVFXを支えるのは、何を見せないかの判断
35人で610カットを作るには、すべてを画で見せることはできません。音や画面外の気配で想像させる部分を作ることは、限られた資源で迫力を出す方法でもあります。自主制作の規模で映像を作るときにも、そのまま使える考え方です。
授業の進め方(90分×2コマ)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 1コマ目 0:00〜0:10 | 導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く |
| 0:10〜 | 本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない) |
| 休憩 | 構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ |
| 2コマ目 | 上映の続き |
| 上映後 15分 | 分析シート「たどる面」を個人で記入 |
| 15分 | ペアで「授業で投げた問い」を話し合う |
| 15分 | 解説(この記事の考察) |
| 5分 | 引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入 |
上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。
授業で投げた問い
- ゴジラが画面に映っていないのに「いる」と感じた場面はどこですか。何がそう感じさせましたか。
- 音が消えた瞬間はどこにありましたか。その直後に何が起きましたか。
- 宿題の「音だけ」で聴いた場面で、画では気づかなかった音はありましたか。
参照動画
授業で上映した作品の予告編と、制作の舞台裏を知るための映像です。
-
『ゴジラ-1.0』ティザー予告
JoBlo Horror Trailers(再掲)
音を消して一度、音を出して一度観て、印象の違いを比べてください。
-
『ゴジラ-1.0』VFXメイキング
白組・東宝ほか
35人のチームがどう画を作ったかが分かります。
-
『ゴジラ-1.0』予告編(日本版)
東宝
日本版の予告編で、音の付け方の違いも確認してください。
参考書籍
この記事の背景をさらに深く知るための本です。リンクはAmazonのKindleストア検索結果を開きます。
-
演出全般
映像の原則 改訂二版
富野由悠季/キネマ旬報社
画と音の関係も含め、映像演出の原則を論理的に解説した技術書です。
出典
- Wikipedia英語版「Godzilla Minus One」(スタッフ、撮影、VFX制作期間)
- Wikipedia英語版「List of accolades received by Godzilla Minus One」(アカデミー賞)
- No Film School「How a Small Team of VFX Artists Pulled Off Godzilla Minus One」(35人、610カット)
- nippon.com の記事(白組の作業環境、キューブリック以来の受賞)
- 『ゴジラ-1.0』配信状況の調査記事(配信状況)
- Netflix Japan 公式X(Netflixでの配信開始)
Wikipediaなどの記述は要約して掲載しています。原文は各リンク先で確認できます。
- 映像概論
- 2020年代
- 音
- VFX
- 白組