映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
1年後期第19回 実写とCGの境界(1)

宇宙で撮れないなら、光の箱を作る 『ゼロ・グラビティ』

今回は、実写とCGの境界がほとんど見えなくなった作品を観ました。宇宙空間で撮影することはできません。それでもこの映画は、観客を本当に宇宙に連れて行きます。

作品データ

公開2013年
監督アルフォンソ・キュアロン
撮影エマニュエル・ルベツキ
VFXFramestore(ロンドン)。3年以上かけ、91分のうち80分以上の場面のVFXを手がけた
上映時間91分
評価アカデミー賞7部門受賞(監督賞、撮影賞、視覚効果賞、編集賞、作曲賞ほか)
配信要確認

作品の基本情報は2026年11月に公開情報で確認しました(Wikipedia「List of accolades received by Gravity」、American Cinematographer)。配信状況は変わるため、授業前に確認してください。

作り手のバックボーン

アルフォンソ・キュアロン(監督) メキシコ出身の監督で、長回しを得意とします。この作品の冒頭も、10分を超える一続きのショットに見える構成です。

エマニュエル・ルベツキ(撮影) キュアロンと長く組んできた撮影監督です。この作品のあと『バードマン』『レヴェナント』でも撮影賞を受賞し、撮影監督として史上初めて3年連続でアカデミー撮影賞を獲りました。

あわせて知りたい作り手

レイチェル・モリソン撮影監督

『マッドバウンド』(2017)で、女性として初めてアカデミー撮影賞にノミネートされた撮影監督です。光で世界を作る仕事の最前線にいる一人です。

考察

1. 光だけは本物にする

宇宙服や背景はCGでも、俳優の顔に当たる光はLEDの光の箱の中で、CGの映像と同じ動きで当てています。顔の光が本物だから、まわりのCGも本物に見えます。

2. 境界は「顔」に引かれている

観客が一番よく見ているのは人の顔です。だから顔だけは本物の芝居と本物の光で撮る。境界線をどこに引くかは、観客がどこを見るかで決まります。

3. 91分という尺

この作品は91分しかありません。第11回の『ルックバック』と同じく、物語の大きさに合わせた尺です。宇宙で一人という状況を、引き伸ばさずに描き切っています。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く
0:10〜本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない)
休憩構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ
2コマ目上映の続き
上映後 15分分析シート「たどる面」を個人で記入
15分ペアで「授業で投げた問い」を話し合う
15分解説(この記事の考察)
5分引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入

上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。

授業で投げた問い

  1. 本物だと信じてしまった瞬間はどこですか。
  2. 顔以外で、本物の光が当たっていると感じたところはありましたか。

参照動画

授業で扱った映像と、理解を深めるための映像です。

参考リンク