15秒で、人を動かす CMという映像の設計
今回は1本の作品ではなく、映像の歴史に残るCMを集めて上映しました。はじめに読むの記事で、映像のお金の流れの一番上に「広告」を置きました。今回はその広告が、どんな映像として作られてきたのかを観ます。僕の会社でも、一番多い仕事はCMや広告の映像です。
今回扱ったCM
| 年 | 作品 | 作り手 | 観るポイント |
|---|---|---|---|
| 1984 | Apple「1984」 | 監督:リドリー・スコット | 映画監督が撮ったCM。アメリカンフットボールの決勝の中継で流れ、CMが「事件」になった |
| 1993 | 日清食品 カップヌードル「hungry?」 | 監督:中島信也 | カンヌ国際広告祭(現カンヌライオンズ)でグランプリ。日本のCMが世界に評価された作品 |
| 2003 | Honda「Cog」 | ワイデン+ケネディ・ロンドン | 車の部品がドミノのように次々に動いていく、一続きに見える映像。第4回『1917』、第19回『ゼロ・グラビティ』の長回しとつながる |
| 2010 | Nike「Write the Future」 | 監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ/VFX:The Mill | サッカーのワールドカップに合わせた大作CM。映画監督と世界のVFXスタジオが組んだ |
| 2024 | マクドナルド「ティロリミックス」 | 電通ほか | MVであり、ショートムービーであり、CMでもある。第2回で扱った |
| — | 講師の仕事から1本 | リキッドブロック | [講師が追加します] |
作品の情報は公開情報をもとにしています。「観るポイント」は授業での観察にもとづく整理です。
作り手のバックボーン
中島信也(CMディレクター) 1959年生まれ。武蔵野美術大学を卒業して東北新社に入り、1983年にCMディレクターとしてデビューしました。日清カップヌードル「hungry?」で1993年のカンヌ国際広告祭グランプリ、サントリー「燃焼系アミノ式」で2003年のACCグランプリ、サントリー「伊右衛門」で2005年のADCグランプリを受賞しています。デジタル技術を使った、見て楽しいCMを作り続けてきた人です。本人は、CMを長く作ってきて分かったことを「すべては人を喜ばせるためにある」と語っています。
リドリー・スコット(Apple「1984」の監督) 『エイリアン』『ブレードランナー』の監督で、もともとCMの世界で腕を磨いた人です。第6回のトニー・スコットの兄でもあります。CMと映画の間を行き来する監督の代表です。
考察
1. CMには「お金を出す人」と「課題」が最初からある
映画やMVは、作り手が作りたいものから始まることがあります。CMは違います。最初に依頼主がいて、売りたい商品があり、解きたい課題があります。作り手の仕事は、その課題を映像で解くことです。自分の作りたいものと、求められているものが重なる場所を探す。僕の書籍で書いた「求めること」と「求められること」が、一番はっきり見える仕事です。
2. 15秒に、はしごの全段が詰まっている
ブランドが伝えたいこと(抽象)を、形容詞にし、場面にし、色や秒数やカットのパラメータに降ろす。CMはそれを15秒でやります。尺が短い分、どこかの段を飛ばすと、すぐに「何のCMか分からない」映像になります。
3. 長回しの系譜は、CMにもある
Honda「Cog」は、部品が次々に動いていく様子を、切れ目のない映像のように見せています。第4回の『1917』、第19回の『ゼロ・グラビティ』と同じく、「切らない」ことが観客を引きつける力になっています。映画の技法とCMの技法は、行き来しています。
4. 映画監督とVFXスタジオが、CMを作っている
リドリー・スコット、イニャリトゥ、そしてThe Mill。世界の一線の作り手が、CMを作っています。CMは映画への遠回りではなく、映像の最前線の一つです。世界のビジュアルスタジオのページも合わせて見てください。
授業の進め方(90分×2コマ)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 1コマ目 0:00〜0:10 | 導入:CMとほかの映像の違い(お金を出す人と課題) |
| 0:10〜0:50 | CM集を上映(1本ずつ、止めずに観る) |
| 0:50〜1:30 | 1本選んで、「誰に・何を・なぜ」と、はしごの4段を書き出す |
| 休憩 | — |
| 2コマ目 0:00〜0:25 | 解説(この記事の考察) |
| 0:25〜1:10 | 演習 |
| 1:10〜1:30 | 数名が発表し、講評 |
授業で投げた問い
- 上映したCMの中で、一番「課題」がはっきりしていたのはどれですか。その課題は何でしたか。
- 15秒のCMで、どこまで情報を削っていましたか。
- CMと分からずに観たら、映画やMVに見える作品はありましたか。
参照動画
授業で上映したCMです。
-
Apple「1984」
Apple(1984年)
映画監督が撮ったCMです。商品がほとんど映らないことに注目してください。
-
日清食品 カップヌードル「hungry?」
日清食品(1993年)
カンヌでグランプリを受賞したCMです。
-
Honda「Cog」
Honda(2003年)
切れ目のない映像のように見せる仕掛けを確認してください。
-
Nike「Write the Future」
Nike(2010年)
映画監督とVFXスタジオが組んだ大作CMです。
参考書籍
-
広告
広告コピーってこう書くんだ!読本
谷山雅計/宣伝会議
「何を言うか」を見つける考え方を書いた、広告の発想の入門書です。CMの企画の芯を一言にする練習になります。
参考リンク
-
ADVERTIMES「CMディレクター・なかじましんや氏の新コラム」(中島信也の経歴)
-
北海道米「ななつぼし」新CMの発表資料(中島信也の受賞歴)
-
ADVERTIMES「カンヌライオンズ2013レポート」(歴代グランプリ作品の上映)
-
映像概論
-
CM
-
広告
-
業界
- 映像概論
- CM
- 広告
- 業界