映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
2年前期第31回 企画書・コンセプトへの逆算(1)

完成した映画を、企画書に戻す 『千と千尋の神隠し』

2年前期は2000年代の作品を、プリプロダクションの目で分解します。最初の題材は、日本の映画で長く興行収入の記録を持っていた『千と千尋の神隠し』です。まず「この映画の企画書には何が書いてあったはずか」を逆算しました。

作品データ

公開2001年7月20日
原作・脚本・監督宮崎駿
作画監督安藤雅司(のちに第25回『君の名は。』の作画監督)
音楽久石譲
上映時間125分
制作スタジオジブリ
評価ベルリン国際映画祭 金熊賞(アニメーション作品として初)、アカデミー長編アニメーション賞(第75回)
興行当時の日本歴代1位。2020年の再上映を含めて興行収入316.8億円
配信日本の主要な配信サービスでは配信されていない(2026年時点で要確認)。DVD・Blu-rayのレンタルで扱う

作品の基本情報は2026年11月に公開情報で確認しました(映画.com、文春オンライン)。配信状況は変わるため、授業前に確認してください。

作り手のバックボーン

宮崎駿(原作・脚本・監督) 『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』などの監督です。知人の10歳の女の子たちに向けた映画を作ろう、という考えがこの作品の出発点になったと語られています。

スタジオジブリ 宮崎駿と高畑勲の作品を作るために作られたスタジオです。プロデューサーの鈴木敏夫と組み、作品ごとに企画と宣伝を一体で設計してきました。

あわせて知りたい作り手

保田道世色彩設計

スタジオジブリの多くの作品で色彩設計を担当した人です。ジブリの画の色は、この人の判断から生まれています。

考察

1. 企画の芯は一言で言える

「名前を奪われた少女が、働くことで自分を取り戻す」。この一言があるから、湯屋という舞台も、働く場面の多さも、すべて理由を持ちます。企画の芯が一言で言えない作品は、途中で迷います。

2. 誰に向けた映画か

10歳の女の子に向けて作る、という対象の絞り方が、主人公の年齢、感情、場面の選び方を決めています。対象が広すぎる企画は、誰にも届きません。

3. はしごで言えば「抽象」

企画の芯は、はしごの一番上の「抽象」です。2年生では、ここからパラメータまで降ろす練習をします。その最初に、完成品から抽象まで戻る練習をしました。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く
0:10〜本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない)
休憩構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ
2コマ目上映の続き
上映後 15分分析シート「たどる面」を個人で記入
15分ペアで「授業で投げた問い」を話し合う
15分解説(この記事の考察)
5分引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入

上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。

授業で投げた問い

  1. この作品を20文字以内で言うと、どうなりますか。
  2. この映画が「誰に向けたものか」が分かる場面はどこですか。

参照動画

授業で扱った映像と、理解を深めるための映像です。

参考書籍

  • プロデュース

    仕事道楽 新版 スタジオジブリの現場

    鈴木敏夫/岩波新書

    ジブリのプロデューサーが、企画と宣伝と作品づくりの現場を語った本です。作品とお金の流れの両方が見えます。

    Kindleで探す電子版は要確認

  • アニメ

    出発点 1979〜1996

    宮崎駿/徳間書店

    宮崎駿の文章と発言を集めた本です。企画の考え方、アニメーションへの姿勢が読めます。

    Kindleで探す電子版は要確認

  • 絵コンテ

    千と千尋の神隠し(スタジオジブリ絵コンテ全集)

    宮崎駿/徳間書店

    監督自身が描いた絵コンテです。企画が画に降りていく過程を見ることができます。

    Kindleで探す電子版は要確認

参考リンク