映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
2年後期第56回 生成AIと作り手

生成AIは、はしごのどこを担うのか

2年間の最後に、どうしても扱っておきたいテーマです。皆さんが卒業して入っていく現場では、生成AIはもう当たり前の道具になっています。僕自身も、仕事で画像や動画の生成AIを使っていますし、企業のAI活用の相談を受けることもあります。だからこそ、怖がるのでも、頼り切るのでもなく、作り手としてどう付き合うかを考えておいてほしいと思います。

生成AIと映像の流れ

年出来事
2022対話型のAI「ChatGPT」が公開され、AIが一気に身近になる
2023Adobeが画像生成AI「Firefly」を発表。Photoshopにも画像を生成して埋める機能が入る。ハリウッドの脚本家と俳優のストライキで、AIの使い方が大きな争点になる
2024文章から動画を作るAIの発表が相次ぐ(OpenAIのSora、快手のKlingなど)。文化庁が「AIと著作権に関する考え方」を示す
今広告やMVで、生成AIを制作の一部に使う例が増えている

出来事は公開情報をもとに要約しています。技術と制度は変化が早いため、授業の時点の最新情報を確認してください。

はしごで考える生成AI

段人がやること生成AIができること
1 抽象なぜ作るのか、誰に何を届けたいのかを決めるできない。ここを決めるのは作り手
2 形容詞作品の空気を言葉にするプロンプトとして受け取る
3 具体場面、構図、光、時間帯を決めるプロンプトとして受け取る
4 パラメータ色、質感、動き、秒数を調整する一瞬で画を出す。ただし細かい調整や一貫性は苦手なことが多い

考察

1. プロンプトは、はしごの形容詞と具体を言葉にしたもの

AIに画を作らせるとき、書く言葉は「冷たい」「静か」「夕方の逆光」「人物は画面の端」といった、形容詞と具体です。つまり、2年間やってきた「降ろす」練習が、そのままプロンプトを書く力になります。言葉にできない人は、AIを使っても欲しい画にたどり着けません。

2. 抽象だけは、AIに渡せない

AIは、言われたものを出します。でも、何を作るべきか、なぜ作るのかは言ってくれません。石を手に取って投げるのは、いつも人です。AIは石を投げる腕を速くしてくれますが、どこに投げるかは決めてくれません。

3. お菓子を無限に作れる機械を、どう使うか

はじめに読むの記事で、ファストな情報をお菓子にたとえました。生成AIは、それっぽい画を無限に作れる機械です。味覚を育てていない人が使えば、お菓子が増えるだけです。逆に、良いものを見分ける目を持っている人にとっては、試行錯誤の回数を何十倍にもできる道具になります。2年間で育てた目が、ここで効いてきます。

4. 権利とお金の話は、避けて通れない

日本の著作権法には、AIの学習のために作品を使うことを広く認める決まり(第30条の4)があります。一方で、AIが作った画が既存の作品とよく似ていれば、著作権の侵害になりうる、というのが文化庁の示している考え方です。仕事では、依頼主がAIの使用を認めているか、使ったサービスの規約で商用利用ができるかも確認が必要です。ここは変化が速く、細かい判断は専門家に確認する分野です。

5. 置き換えられやすいのは「作業を請け負う」部分

お金の流れの話で、権利を持つ側と、作業を請け負う側があると話しました。AIが一番置き換えやすいのは、決められたものを決められた通りに作る作業です。だからこそ、企画し、判断し、人を巻き込み、出てきた画を選んで仕上げる側の価値が上がっていきます。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:15導入:生成AIと映像の流れ
0:15〜0:45動画生成AIの公開デモと、広告・MVでの使用例を観る
0:45〜1:30はしごで考える:AIができること、できないことを班で書き出す
休憩—
2コマ目 0:00〜0:20解説:権利とお金の基本
0:20〜1:05演習(AIを使える環境なら実際に試す。使えない場合は、プロンプトを書くところまで)
1:05〜1:30数名が発表し、講評

授業で投げた問い

  1. AIが出した画の中で、「これは使える」と思ったものと、「何かが違う」と思ったものは何ですか。違和感の正体は何でしたか。
  2. 自分の作品で、AIに任せたくない部分はどこですか。それはなぜですか。
  3. AIが当たり前になったとき、作り手として何を武器にしますか。

参照動画

生成AIの映像を知るための映像です。

参考書籍

  • 権利

    18歳の著作権入門

    福井健策/ちくまプリマー新書

    作る側も使う側も知っておくべき著作権の基本を、若い読者向けに書いた入門書です。

    Kindleで探す電子版は要確認

参考リンク

この記事は法律の助言ではありません。具体的な判断が必要なときは、学校や専門家に確認してください。