映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
2年前期第43回 ルックの設計(1)

映画全体を、二つの色で塗る 『アメリ』

ルックの設計の回です。2001年のフランス映画『アメリ』を題材にしました。1年後期の第27〜28回で『ラ・ラ・ランド』の色を扱いましたが、今回は「作品全体のルック」をどう設計するかを見ました。

作品データ

公開2001年
監督ジャン=ピエール・ジュネ
撮影ブリュノ・デルボネル
音楽ヤン・ティルセン
ルックの特徴緑・赤・金を中心にした色づかい。ブラジルの画家フアレス・マシャードの絵を参考にした。35mmフィルムで撮影し、撮影後のデジタルの色調整(デジタル・インターミディエイト)で全体のトーンを作る
上映時間約2時間
配信要確認

作品の基本情報は2026年11月に公開情報で確認しました(VIFF「Film Studies: Digital Colour」、Home Theater Forum)。配信状況は変わるため、授業前に確認してください。

作り手のバックボーン

ジャン=ピエール・ジュネ(監督) 独特の色づかいと美術で、空想的な世界を作る監督です。この作品でも、現実のパリを、少しだけ現実離れした色の街に変えています。色の源流は、映画ではなく一人の画家の絵でした。ルックの参考は、映像の外からも持ってこられます。

あわせて知りたい作り手

ソフィア・コッポラ監督・脚本

『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)でアカデミー脚本賞を受賞し、『マリー・アントワネット』(2006)では淡い色づかいで世界観を作った監督です。色で語る作り手の一人です。

考察

1. 色を絞ると、世界観が立つ

使う色を絞ることで、どの場面を切り取っても『アメリ』だと分かる画になっています。第8回の『DUNE』は場所ごとに色を分けましたが、この作品は全体を一つの色の世界にしています。

2. デジタルの色調整が、ルックを作り込める時代

撮影したあとに、色を細かく調整する手法が広がったことで、作品全体のルックを作り込めるようになりました。技術の変化が、表現の幅を広げた例です。

3. ルックは、観客への約束

一目で分かるルックは、「この作品はこういう世界です」という観客への約束です。予告編やポスターでも、その約束が伝わります。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く
0:10〜本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない)
休憩構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ
2コマ目上映の続き
上映後 15分分析シート「たどる面」を個人で記入
15分ペアで「授業で投げた問い」を話し合う
15分解説(この記事の考察)
5分引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入

上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。

授業で投げた問い

  1. 選んだ2つの色は、それぞれどんな感情と結びついていましたか。
  2. この作品を普通の色で撮っていたら、何が失われますか。

参照動画

授業で扱った映像と、理解を深めるための映像です。

参考リンク