映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
2年前期第34回 台本構成とテンションカーブ(1)

悪役が、物語の構造を壊しにくる 『ダークナイト』の構成

今回から3回は、台本構成とテンションカーブを2000年代の作品で扱います。1年前期の第11〜12回で『ルックバック』の構成とカーブを描きました。今回は、上映時間が152分ある長編で、その構造を分解します。

作品データ

公開2008年
監督・脚本クリストファー・ノーラン
撮影ウォーリー・フィスター
音楽ハンス・ジマー、ジェームズ・ニュートン・ハワード
上映時間152分(第34回と第35回で分けて上映)
撮影の特徴大作映画として初めてIMAXカメラを本格的に使い、ジョーカーが初めて登場する場面など約28分をIMAXで撮影
評価ヒース・レジャーがアカデミー助演男優賞を受賞(没後)。音響編集賞も受賞
配信要確認

作品の基本情報は2026年11月に公開情報で確認しました(Wikipedia「The Dark Knight」)。配信状況は変わるため、授業前に確認してください。

作り手のバックボーン

クリストファー・ノーラン(監督・脚本) 『メメント』で時間の構成をいじる映画を作り、のちに『インセプション』『オッペンハイマー』を撮る監督です。構成そのものを仕掛けにする作り手です。

ハンス・ジマー(音楽) 第7〜8回の『DUNE』の音楽も手がけた作曲家です。2000年代から2020年代まで、大作映画の音を作り続けています。

あわせて知りたい作り手

キャスリン・ビグロー監督

『ハート・ロッカー』(2009)で、女性として初めてアカデミー監督賞を受賞した監督です。緊張が途切れない構成は、『ダークナイト』と並べて観る価値があります。

考察

1. 主人公と悪役の「欲しいもの」

主人公は街の秩序を、悪役は秩序が壊れる瞬間を欲しがっています。二人の欲しいものが正反対だから、物語が前に進み続けます。構成の土台は、登場人物が何を欲しがっているかです。

2. 終わりそうで終わらない

普通の映画なら、悪役を捕まえたところで山場を迎えます。この映画は、捕まえたところからさらに状況が悪くなります。観客の「ここで終わるだろう」という予想を、構成で裏切っています。

3. 152分を2回に分ける理由

1年生のときに決めた通り、通し鑑賞は2時間前後が上限です。長い作品は、構成の区切りで分けて観ます。どこで分けるかを考えることも、構成を読む練習です。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10導入:作品の背景と、前後半に分ける位置を伝える
0:10〜前半を上映(止めない・戻さない・飛ばさない)
休憩—
2コマ目前半の上映の続き(構成の区切りまで)
上映後 20分分析シート「たどる面」を前半分だけ記入。テンションカーブを途中まで描く
20分解説(前半の考察)
5分後半で何が起きるかを予想して書く

長編のため2回に分けて上映します。分ける位置は構成の区切りで決めます。

授業で投げた問い

  1. 前半で、終わりそうで終わらなかった場面はどこですか。
  2. 主人公と悪役の欲しいものは、どこで一番強くぶつかっていましたか。

参照動画

授業で扱った映像と、理解を深めるための映像です。

参考書籍

  • 脚本

    SAVE THE CATの法則

    ブレイク・スナイダー/フィルムアート社

    構成の型を知るための脚本術です。型を知ってから、型を裏切る構成を読み解いてください。

    Kindleで探す電子版は要確認

参考リンク