映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
1年後期第23回 モーショングラフィックス(1)

CGに、印刷のズレを描き足す 『スパイダーマン:スパイダーバース』のルック

後期のモーショングラフィックスの回は、CGアニメーションの見た目を大きく変えた作品から始めます。CGを学ぶ学生には、技術とルックの関係を考えるのにこれ以上ない題材です。

作品データ

公開2018年
監督ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
製作フィル・ロード、クリストファー・ミラー
制作ソニー・ピクチャーズ アニメーション(CGはソニー・ピクチャーズ イメージワークス)
評価アカデミー長編アニメーション賞(第91回)。監督の一人ピーター・ラムジーは、この部門でノミネート・受賞した初のアフリカ系アメリカ人
ルックの特徴漫画の網点、印刷の色ズレ、線画を3DCGに重ねる
配信要確認

作品の基本情報は2026年11月に公開情報で確認しました(Wikipedia「Spider-Man: Into the Spider-Verse」、The Hollywood Reporter)。配信状況は変わるため、授業前に確認してください。

作り手のバックボーン

フィル・ロード、クリストファー・ミラー(製作) 『くもりときどきミートボール』『LEGO ムービー』で、CGアニメーションの見た目を毎回変えてきたコンビです。この作品でも、CGアニメの「当たり前の見た目」を疑うところから始めています。

考察

1. 失敗に見えるものを、表現にする

印刷の色ズレは、本来は失敗です。この作品はそれを、ピントの外れた背景や、画面の奥行きの表現として使っています。欠点をルールに変えることで、新しいルックが生まれています。

2. 漫画という源流

網点、集中線、吹き出しの文字。どれも紙の漫画から来ています。CGの作品の源流が、紙の印刷物にあるという例です。

3. ルックは選択

CGは、写真のようにリアルにもできるし、手描きのようにもできます。どちらに寄せるかは、技術ではなく作品が何を伝えたいかで決まります。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く
0:10〜本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない)
休憩構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ
2コマ目上映の続き
上映後 15分分析シート「たどる面」を個人で記入
15分ペアで「授業で投げた問い」を話し合う
15分解説(この記事の考察)
5分引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入

上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。

授業で投げた問い

  1. 漫画の印刷のようだと感じた部分は、場面のどんな感情と結びついていましたか。
  2. この作品を写真のようなリアルなCGで作ったら、何が失われますか。

参照動画

授業で扱った映像と、理解を深めるための映像です。

参考書籍

  • アニメ

    ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法

    フランク・トーマス、オーリー・ジョンストン/徳間書店

    ディズニーのアニメーターが、動きで命を表現する原則を書いた本です。アニメーションの12の原則の原典です。

    Kindleで探す電子版は要確認

  • メイキング

    The Art of Spider-Man: Into the Spider-Verse

    Ramin Zahed

    ルックの開発過程をまとめたアートブックです(英語)。

    Kindleで探す電子版は要確認

参考リンク