見えない光で撮った白黒の惑星 『DUNE PART2』と光の設計
第7回と第8回は「光と色」です。題材の『デューン 砂の惑星PART2』は上映時間が166分あり、1回の授業の上限(約2時間)を超えるため、前半と後半を2回に分けて上映します。前編では「光」、後編では「色とカラコレ」を扱います。
作品データ
| 『デューン 砂の惑星PART2』 | |
|---|---|
| 公開 | 2024年3月1日(米国) |
| 上映時間 | 166分 |
| 監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
| 撮影 | グリーグ・フレイザー |
| 美術 | パトリス・ヴェルメット |
| 衣装 | ジャクリーン・ウェスト |
| 音楽 | ハンス・ジマー |
| 撮影地 | ハンガリー(ブダペスト)、ヨルダン、アブダビ |
| 光の特徴 | ジェディ・プライムの屋外を、赤外線だけを記録するカメラで白黒撮影 |
| 配信 | Prime Video:レンタル・購入(見放題対象外)/Netflix:2025年11月頃に配信終了/Disney+:配信なし 2026年6〜10月時点の調査記事より。参考:U-NEXTでは見放題 |
出典:撮影監督グリーグ・フレイザーへのインタビュー記事(British Cinematographer、American Cinematographer ほか)、配信状況の調査記事をもとに要約しています。
作り手のバックボーン
ドゥニ・ヴィルヌーヴ(監督) カナダ・ケベック出身で、『メッセージ』『ブレードランナー 2049』を手がけてきました。ジェディ・プライムの太陽は「色を発しない」という設定を思いつき、それが赤外線撮影の出発点になりました。
グリーグ・フレイザー(撮影) 前作『DUNE』でアカデミー撮影賞を受賞しています。前作がアカデミー賞6部門を獲った授賞式のわずか4日後に、ブダペストで続編の準備に入ったと語っています。赤外線は『ゼロ・ダーク・サーティ』などで試していた手法で、「目には見えないが、カメラには見える」点に以前から惹かれていました。
赤外線撮影という光の設計
ジェディ・プライムの屋外は、可視光をほぼ遮り赤外線だけを記録するように改造したカメラで撮影されています。後処理で色を抜いたのではなく、撮影の段階で白黒です。
赤外線では、目で見た明暗と写る明暗が一致しません。テストでは、赤が黒に、デニムが白に写りました。黒く見せたい衣装が白く写ってしまうため、一部の衣装は屋外用と屋内用の2着が作られています。室内の人工光から屋外の太陽光へ出た瞬間に、画が色から白黒へ切り替わるショットもあります。
考察:比較から何が言えるか
1. 光の種類が、世界のルールになる
砂漠の惑星アラキスは強い太陽光の世界、ジェディ・プライムは「見えない光」の世界です。光の性質そのものを変えることで、説明のセリフなしに観客は別の惑星に来たと理解します。
2. 光の設計は撮影部だけの仕事ではない
赤外線で撮ると決めたことで、衣装は作り直され、美術はテスト結果をもとに設計されました。光の選択は、プリプロダクションの段階で美術・衣装を巻き込む決定です。
3. 白黒は「色を抜いた画」ではない
第3回の黒澤モードは色の画を白黒に変換する仕組みでした。ジェディ・プライムは最初から白黒として撮られています。同じ白黒でも、撮影で決めるか後で変換するかで、画の作られ方はまったく違います。
授業の進め方(90分×2コマ)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 1コマ目 0:00〜0:10 | 導入:作品の背景と、前後半に分ける位置を伝える |
| 0:10〜 | 前半を上映(止めない・戻さない・飛ばさない) |
| 休憩 | — |
| 2コマ目 | 前半の上映の続き(構成の区切りまで) |
| 上映後 20分 | 分析シート「たどる面」を前半分だけ記入。テンションカーブを途中まで描く |
| 20分 | 解説(前半の考察) |
| 5分 | 後半で何が起きるかを予想して書く |
長編のため2回に分けて上映します。分ける位置は構成の区切りで決めます。
授業で投げた問い
- アラキスとジェディ・プライムで、光の向きと強さはどう違いましたか。
- 屋内から屋外へ出て白黒に変わるショットで、何を感じましたか。
- 宿題の自撮り2枚で、光の向きを変えると印象はどう変わりましたか。
参照動画
授業で上映した作品の予告編と、撮影手法を知るための映像です。
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『デューン 砂の惑星PART2』Official Trailer
Warner Bros. Pictures
アラキスとジェディ・プライムの光の違いを確認してください。
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ジェディ・プライムの赤外線撮影のメイキング
解説動画
赤外線カメラでの撮影と衣装の工夫が分かります。
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グリーグ・フレイザーの撮影解説
解説動画
撮影監督が光の設計を語る映像です。
参考書籍
この記事の背景をさらに深く知るための本です。リンクはAmazonのKindleストア検索結果を開きます。
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色と光
カラー・アンド・ライト
ジェームス・ガーニー/ボーンデジタル
画家が、光と色の見え方を実例で説明した本です。CGのライティングにもそのまま使えます。
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原作
デューン 砂の惑星
フランク・ハーバート/早川書房
原作小説です。ジェディ・プライムの描写を読むと、映像化での光の解釈がよく分かります。
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メイキング
The Art and Soul of Dune: Part Two
Tanya Lapointe
制作の舞台裏をまとめた公式アートブックです(英語)。
出典
- British Cinematographer「Greig Fraser ASC ACS / Dune: Part Two」(準備の経緯、赤外線テストの結果)
- American Cinematographer「Expanding the View for Dune: Part Two」(光の設定、屋内外の切り替え)
- NAB Amplify の記事(改造カメラ、衣装の作り分け)
- /Film の記事(フレイザーの過去の赤外線撮影)
- 『デューン PART2』配信状況の調査記事(配信状況)
Wikipediaなどの記述は要約して掲載しています。原文は各リンク先で確認できます。
- 映像概論
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- 光
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- 赤外線