36年前の構図を、どう引き継いだか 『トップガン』と『トップガン マーヴェリック』
後編では、1986年の『トップガン』と2022年の『マーヴェリック』を並べ、同じ場面がどう撮られているかを比べました。前編の「カメラの位置」に対して、後編は「構図の様式」がテーマです。この授業で初めて、作品をはっきり「遡る」回でもあります。
作品データ
| 『トップガン』(1986) | 『トップガン マーヴェリック』(2022) | |
|---|---|---|
| 公開 | 1986年5月(米国) | 2022年5月27日(米国) |
| 監督 | トニー・スコット | ジョセフ・コシンスキー |
| 撮影 | ジェフリー・L・キンボール | クラウディオ・ミランダ |
| 製作 | ドン・シンプソン、ジェリー・ブラッカイマー | トム・クルーズ、ジェリー・ブラッカイマーほか |
| 空中の撮り方 | 俳優を実機の空中で撮ることはできなかった | 操縦席にカメラ6台を載せ、俳優を空中で撮影 |
| 配信 | 記事によりPrime Video見放題とレンタルの情報が分かれるため要確認。Netflixは2026年6月で見放題終了との報道 | Prime Video:レンタル・購入(見放題対象外)/Netflix・Disney+:配信なし 2026年10月時点の調査記事より。参考:U-NEXT・Huluでは見放題 |
出典:Wikipedia英語版「Top Gun: Maverick」、撮影監督クラウディオ・ミランダへのインタビュー記事、配信状況の調査記事をもとに要約しています。
作り手のバックボーン
トニー・スコット(1986年版 監督) CM演出の出身で、強い逆光、夕景、望遠レンズで圧縮した画面を得意としました。1986年版の「夕日を背にした機体」の画は、その広告的な様式から生まれています。
クラウディオ・ミランダ(2022年版 撮影) 前作の撮影監督ジェフリー・キンボールに直接話を聞き、前作の撮り方と苦労を確認しています。そのうえでグラデーションフィルターや薄い粒子を加え、デジタル撮影の画に前作の質感を持たせました。
トニー・スコットへの献辞 続編は2012年に企画が進みかけましたが、スコットの死で止まりました。完成した作品はスコットに捧げられています。構図の引用は、技術的な選択であると同時に、前作の監督への敬意でもあります。
構図の様式を分解する
| 要素 | 1986年版 | 2022年版での扱い |
|---|---|---|
| 時間帯 | 夕景、逆光の甲板 | 同じ時間帯と逆光の画を引用 |
| レンズ | 望遠で背景を圧縮 | 空母の甲板などで同様の圧縮を使う |
| 質感 | フィルムの粒子、グラデーションのかかった空 | フィルターと粒子で質感を再現 |
| 空中の顔 | 撮れなかった | 操縦席のカメラで撮った(更新した点) |
表の「1986年版」は授業での観察にもとづく整理です。2022年版のフィルターと粒子は撮影監督のインタビューによります。
考察:比較から何が言えるか
1. 続編は「引き継ぐもの」と「更新するもの」を分けて設計する
時間帯、レンズの圧縮、空の質感は引き継ぎ、空中での俳優の顔だけを更新しています。全部を新しくすると前作との連続性が切れ、全部を真似すると続編を作る理由がなくなります。どこを動かすかを決めることが設計です。
2. 様式は作り手の経歴から来ている
1986年版の画は、CM出身のスコットの様式です。分析シートの「源流作品」は、作品だけでなく「その監督がどこで画を覚えたか」までたどると、構図の理由が見えてきます。
3. 構図は観客の記憶に働きかける
前作を観た観客は、夕景の甲板の画を見た瞬間に1986年を思い出します。構図は情報を伝えるだけでなく、記憶を呼び起こす装置にもなります。
授業の進め方(90分×2コマ)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 1コマ目 0:00〜0:10 | 導入:今回の観点を伝え、「観る前の予想」を書く |
| 0:10〜 | 本編上映(止めない・戻さない・飛ばさない) |
| 休憩 | 構成の区切りで休憩。前半で気づいたことを1行メモ |
| 2コマ目 | 上映の続き |
| 上映後 15分 | 分析シート「たどる面」を個人で記入 |
| 15分 | ペアで「授業で投げた問い」を話し合う |
| 15分 | 解説(この記事の考察) |
| 5分 | 引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入 |
上映時間が長い場合は、ペアの話し合いを短くして解説の時間を確保します。
授業で投げた問い
- 1986年版と2022年版で、ほぼ同じ構図だと感じた場面はどこですか。
- 2022年版で、前作から最も大きく変わった画はどれですか。
- 自分が続編を作るとしたら、前作から何を引き継ぎ、何を変えますか。
参照動画
授業で比較した2作品の映像です。
-
『トップガン マーヴェリック』Official Trailer
Paramount Pictures
1986年版と同じ時間帯・同じ構図の画を探してください。
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『トップガン』(1986)予告編
Paramount Pictures
夕景、逆光、望遠の画を確認してください。
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トニー・スコットの映像スタイル
解説動画
CM出身の監督の画作りの特徴を知るための参考です。
参考書籍
この記事の背景をさらに深く知るための本です。リンクはAmazonのKindleストア検索結果を開きます。
-
演出全般
映像の原則 改訂二版
富野由悠季/キネマ旬報社
構図とレンズの選択が生む意味を論理的に解説した技術書です。
出典
- Wikipedia英語版「Top Gun: Maverick」(企画の経緯、献辞)
- British Cinematographer「Claudio Miranda ASC / Top Gun: Maverick」(前作撮影監督との対話)
- LA Times(PressReader)の撮影監督記事(粒子とトニー・スコットへの敬意)
- 『トップガン』配信状況の調査記事(配信状況)
Wikipediaなどの記述は要約して掲載しています。原文は各リンク先で確認できます。
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