映像概論現代映像概論 ―今から、源流へ遡る2年間
1年前期第14回 世界観の作り方(後編):ビジュアル

キャラクターそのものがエフェクトになる世界 『マイ・エレメント』のビジュアル設計

後編では、前回の「ルール」がどう画になっているかを見ました。CGを学ぶ学生にとっては、キャラクターとエフェクトの境界がなくなる表現として、技術面でも注目したい作品です。

作品データ

『マイ・エレメント』
公開2023年6月16日(米国)、2023年8月4日(日本)
上映時間109分
監督ピーター・ソーン
制作ピクサー・アニメーション・スタジオ(長編27作目)
制作期間約7年
舞台火・水・土・風の住人が暮らす「エレメント・シティ」
配信Disney+:見放題/Prime Video:レンタル/Netflix:配信なし 2026年5月時点の調査記事より

出典:前回と同じ記事をもとに要約しています。

ビジュアルの設計を分解する

要素作品での扱い(授業での観察を含む)
キャラクター炎や水が常に揺らぎ、感情に合わせて形や光が変わる。エフェクトがそのまま演技になっている
街コロナ禍の時期に、制作チームはアムステルダムやヴェネツィアなど運河の街をオンラインで取材し、街のデザインに活かした
地区ニューヨークのリトルイタリーやコリアタウンのような移民街がもとになっている

考察:比較から何が言えるか

1. キャラクターとエフェクトの境界がなくなる

普通のCGアニメでは、キャラクターのアニメーションとエフェクトは別の工程です。この作品では、炎の揺らぎや水の透明感そのものが感情表現になっているため、二つが切り離せません。第1回で見た「レイヤー構造の統合」と同じ流れが、キャラクターの中で起きています。

2. 実在の街を参考に、ルールで組み替える

運河の都市という実在の参考を持ちながら、それを元素のルールで組み替えることで、見たことのない、でも信じられる街になっています。リファレンスはそのまま使うのではなく、自分の世界のルールで翻訳して使います。

3. 世界観の設計書は、プリプロの中心になる

ルールとビジュアルをまとめた設計書があれば、チームの誰が描いても同じ世界になります。2年前期では、この設計書(ルック、カラースクリプト、ルール)を自分の企画で作ります。宿題の「ルール5つと街のスケッチ」は、その最初の一歩です。

授業の進め方(90分×2コマ)

時間内容
1コマ目 0:00〜0:10前回の振り返り:前回の分析シートを読み返す
0:10〜0:50主要場面を再上映(観点を絞って観る)
0:50〜1:30演習(個人)
休憩—
2コマ目 0:00〜0:30演習の続き、ペアで見せ合う
0:30〜0:50数名が発表
0:50〜1:20解説(この記事の考察)
1:20〜1:30引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入

作品の本編は前回すべて上映しています。今回は場面を絞って再上映し、手を動かす時間を中心にします。

授業で投げた問い

  1. エンバーの感情が、炎の形や色でどう表現されていましたか。
  2. 街の中で、実在の都市を思わせる場所はどこでしたか。
  3. 自分の世界のルールを1つ選び、それが「画」にどう表れるかを説明してください。

参照動画

世界観のビジュアルを考えるための映像です。

参考書籍

この記事の背景をさらに深く知るための本です。リンクはAmazonのKindleストア検索結果を開きます。

  • メイキング

    The Art of Elemental

    Disney/Pixar

    街とキャラクターの設計過程をまとめたアートブックです(英語)。

    Kindleで探す電子版は要確認

出典

Wikipediaなどの記述は要約して掲載しています。原文は各リンク先で確認できます。