テンションカーブを線で描く 『ルックバック』の感情の設計
後編では、前回観た『ルックバック』の主要場面を見直しながら、テンションカーブを実際に線で描きました。前編の「構成(どこで区切るか)」に、後編では「高さ(どれだけ感情が動くか)」を重ねます。
作品データ
| 『ルックバック』 | |
|---|---|
| 劇場公開 | 2024年6月28日 |
| 上映時間 | 58分 |
| 原作 | 藤本タツキ(2021年7月「少年ジャンプ+」の読み切り。初日の閲覧数250万以上、「このマンガがすごい!2022」オトコ編1位) |
| 監督・脚本・キャラクターデザイン | 押山清高 |
| 美術監督 | さめしまきよし |
| 色彩設計 | 楠本麻耶 |
| 撮影監督 | 出水田和人 |
| 編集 | 廣瀬清志 |
| 音響監督 | 木村絵理子 |
| 音楽 | haruka nakamura |
| アニメーション制作 | スタジオドリアン |
| 声の出演 | 河合優実(藤野)、吉田美月喜(京本)。ともに声優は初挑戦 |
| 興行 | 約120館の規模で公開、2週連続で興行収入1位。興行収入20億円突破(2024年10月時点) |
| 配信 | Prime Video:見放題(2024年11月8日から世界独占配信、プライム特典対象)/Netflix・Disney+:配信なし |
出典:前回と同じ記事をもとに要約しています。
テンションカーブの描き方
- 横軸に時間(分)、縦軸に緊張・感情の高さを取る
- 場面ごとに点を打つ。前編で区切った4つの段階を横軸に書き込む
- 点を線でつなぎ、「山」と「谷」に印をつける
- 山の直前に何があるか、谷の長さはどれくらいかを書き込む
考察:比較から何が言えるか
1. 谷の長さが、山の高さを決める
二人が黙々と描き続ける静かな時間が長く続くからこそ、転換点の衝撃が大きくなります。山を高くしたいとき、山そのものを派手にするより、手前の谷を丁寧に作る方が効くことがあります。
2. 音楽は感情を押しつけない
音楽を担当したharuka nakamuraの音は、場面を盛り上げるために鳴るのではなく、静かに寄り添う方向で使われています。第10回の『ゴジラ-1.0』で考えた「音楽をどこで使わないか」と同じ問いが、ここにもあります。
3. 年月を飛ばす「圧縮」の技術
共作の時代は、季節や年月を短いカットの連なりで一気に進めます。テンションカーブでいえば、ゆるやかな上り坂を短い時間に圧縮する技術です。長い時間を短く見せる編集は、自主制作でもすぐに使える手法です。
4. カーブは「観客の体験」の設計図
テンションカーブは物語のあらすじではなく、観客が感じる時間の地図です。2年前期のプリプロダクションでは、このカーブを自分の企画で先に描いてから、コンテに入ります。
授業の進め方(90分×2コマ)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 1コマ目 0:00〜0:10 | 前回の振り返り:前回の分析シートを読み返す |
| 0:10〜0:50 | 主要場面を再上映(観点を絞って観る) |
| 0:50〜1:30 | 演習(個人) |
| 休憩 | — |
| 2コマ目 0:00〜0:30 | 演習の続き、ペアで見せ合う |
| 0:30〜0:50 | 数名が発表 |
| 0:50〜1:20 | 解説(この記事の考察) |
| 1:20〜1:30 | 引き出しノートに3つ、降ろす欄を記入 |
作品の本編は前回すべて上映しています。今回は場面を絞って再上映し、手を動かす時間を中心にします。
授業で投げた問い
- 描いたカーブで、一番高い山はどこですか。その直前の谷はどれくらい続きましたか。
- 音楽が止まっている時間に、何が感情を運んでいましたか。
- 宿題の映画のカーブと比べて、形はどう違いましたか。
参照動画
テンションカーブを考えるための映像です。
-
劇場アニメ『ルックバック』本予告
エイベックス・ピクチャーズ
予告編にもテンションカーブがあります。2分の中の山と谷を描いてみてください。
-
haruka nakamura「Light song」
haruka nakamura
主題歌です。本編の音楽の方向性を確認してください。
参考書籍
この記事の背景をさらに深く知るための本です。リンクはAmazonのKindleストア検索結果を開きます。
-
原作
ルックバック
藤本タツキ/集英社(ジャンプコミックス)
原作で同じ場面のページ配分を見ると、漫画のテンションカーブが分かります。
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脚本
SAVE THE CATの法則
ブレイク・スナイダー/フィルムアート社
脚本の構成とビートを解説した定番の脚本術です。カーブの山と谷を言葉にする助けになります。
出典
- アニメ!アニメ!「ルックバック」配信決定の記事(スタッフ一覧、配信)
- PHILE WEB の記事(公開規模、興行、監督の経歴)
- アニメハック(映画.com)の記事(原作の閲覧数、声の出演)
- 電撃オンラインの記事(原作者のコメント)
- 映画.com 作品ページ(押山清高の参加作品)
Wikipediaなどの記述は要約して掲載しています。原文は各リンク先で確認できます。
- 映像概論
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